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Case18:一歩踏み込んだ質問でお客様が何を求めているかを明確にする2023年4月10日

お客様を相手にした商売にカスタマーサービスは必要不可欠。この連載では顧客対応に関する“アレコレ”を「カスタマーサービスのお悩み相談室」の個性豊かな面々が解説していきます。

今回ご紹介するのは、いつも冷静沈着な室内随一の頭脳派である青山健一(47)が担当した【オーダーメイド靴ショップにおけるすれ違いクレーム】模範解答編です。

お褒めの言葉をいただいただけで満足してはいけない

青山健一(47)

こんにちは、青山です。

前回に引き続き、オリジナル&オーダーメイド靴ショップ・テーラーフィッツで起こった事例について解説します。革靴の仕上がりに満足いただけず、クレームに発展してしまった今回のケース。問題は、オーダーの段階でお客様との意思疎通ができておらず、認識のズレがあった点にあります。

クレーム内容
  • ◆オーダーメイドした革靴の仕上がりがイメージと違った。

 
テーラーフィッツの常連客で、今回オーダーメイドを依頼した梶原正志さん(51)の主張について、改めて考えてみましょう。梶原さんは注文の際、「この店の商品を愛用している」と確かに伝えていました。では、梶原さんは“何を”気に入って愛用していたのでしょう? それを確認しないまま、オーダーを担当した佐藤貴彦さん(29)が「オーダーメイドでもいつもと同じにできますよ」と言ってしまったことが、今回のケースにおけるしくじりポイント。おそらく佐藤さんは「見た目を同じにできる」という意味でこの言葉を言ったのであり、対して梶原さんは「履き心地を同じにできる」と受け取ったため、認識のズレが生じてしまったのです。
 
すべてのお客様が思っていることを上手く言葉にできるとは限りません。だからこそ、お客様が本当に求めているものが何なのかを丁寧にひも解き、汲み取る作業が必要です。今回のケースで言えば、革靴のデザインなのか、耐久性なのか、はたまた機能性なのか、それを明確にした上でオーダーを受けるべきでしたね。ましてや佐藤さんは、既製品と異なる滑らかな革を用いることを伝えていませんでした。梶原さんが既製品のハリがある革を気に入っていたにもかかわらずです。当然これもNG。いかなる場合も説明はしっかりするべきです。

 


 

・・・・・・(オーナー中田功男さん(42)と対応を代わる)・・・・・・

 

nakata
中田功男

本日はご来店ありがとうございます。オーダーシューズの件で、仕上がりにご満足いただけなかったとのこと、誠に申し訳ありません。

kajiwara
梶原正志

私は常連だから、おたくが良い靴を作っているのは知っているよ。だからオーダーメイドを頼んだんだ。正直、おたくの店にはガッカリだよ。

nakata
中田功男

日頃より弊社製品をご愛顧くださり、誠にありがとうございます。長年ご愛用いただいているお客様を残念な気持ちにさせてしまい、重ねて申し訳ありませんでした。もしよろしければ、私どものシューズのどのような点を梶原様は気に入ってくださっているか、詳しく伺ってもよろしいでしょうか?

kajiwara
梶原正志

履き心地だね。革靴は柔らかいやつよりちょっとハリがあるくらいが好みなんだ。それだって伝えたつもりだったけど…。

nakata
中田功男

左様でございましたか。弊社では既製品とオーダー品で使う素材を変えており、オーダー品の方が既製品よりも柔らかい履き心地になっています。梶原様への確認やご説明が足りず、申し訳ありませんでした。

kajiwara
梶原正志

それを先に言ってくれないと困るよ。こっちはいつもの履き心地で、自分のサイズに合った一品物が欲しかったんだから。

nakata
中田功男

「いつもの履き心地」というのは「既製品の生地革でハリのあるもの」、ということですね。それでは梶原様のお好みに沿うよう、◯◯と××の部分の革を既製品と同じ革の素材に変えさせていただきます。

kajiwara
梶原正志

ありがとう!楽しみにしているよ。こっちも申し訳なかったね。

 


褒めてもらったところで会話を終わらせようとするのではなく、一歩踏み込んで“自社製品の何を気に入ってもらえているのか”を明確にしたところが良かったですね。それによってお客様が本当に望んでいることや何を期待されているのかを把握できます。また、梶原さんの言葉を繰り返して意図を再確認したのも素晴らしい。これは「リフレクティング」と呼ばれるテクニックで、相手に“話をしっかり聞いていますよ”とアピールするとともに、お互いの認識にズレがないかをさりげなく確かめる効果があります。
 
この他、使用する素材の違いについて説明が足りなかったことも謝罪していますが、履き心地の好みは人それぞれですから、「滑らかな履き心地の方が喜んでもらえるはず」といった思い込みはやはりすべきではありません。後になって、こんなはずじゃなかった!なんて事態を避けるためにも、しっかりと説明責任を果たすのがクレーム防止の鉄則です。
 

※この記事はカスタマーサービスの対応例を学ぶために事実を元に構成したフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

 

弁護士 藤本慎司 監修|東京弁護士会所属

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