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Case6:食品の異物混入によるトラウマに賠償責任はあるのか?2020年11月2日
今回ご紹介するのは、一見近寄りがたい風貌ながら話すと人を虜にしてしまう大杉毅(50)が担当した【食品製造業における異物混入クレーム】トラブル発生編です。
クレーマーの常套句「誠意を見せろ」には要注意
こんにちは、大杉です。
今回は私が担当した食品製造業で起きた異物混入クレームをご紹介しましょう。食品の異物混入といえば、企業のダメージが計り知れない事案です。基本は現物を確認し、お詫びとともに商品交換等の対応を行うものですが、このケースは一筋縄ではいきませんでした。対応にあたっていたのはアスカ製菓のCS(カスタマーサービス)部の部長である渡邊巧さん(48)。ベルトコンベアーの一部のような白い破片が入っていたという商品現物はすでに回収し、調査に回しているところですが、多額な損害賠償の要求にどう対応すべきか悩んでいたそうです。
「ショックであれ以来、焼き菓子系統の食品全般を食べられなくて仕事にならない」
とお申し出をいただいたのは山下智史さん(52)。非常に落ち着いた様子でお電話をいただいたそうですが、単なる異物混入のクレームではありませんでした。この異物混入のせいでトラウマになり、本職の飲食関係コンサルタント業に支障が出ており、その補償を要求。最終的にはSNSで拡散するとのお話にまで発展したとのこと。
この度はご迷惑おかけし、申し訳ありません。深くお詫び申し上げます。調査結果をお伝えいたしますと、工場コンベアの破片が混入したと推測されることが判明いたしました。誠に申し訳ありませんでした。お詫びとして代替え品をお送りさせていただきたく存じます。
ショックであれ以来、同系統の食品が食べられなくて仕事にならないんだよ。異物混入に気づいた時点で動悸がひどくなって病院で診察を受けてるし、その後も口にするたび調子が悪くなって、すでに3回通院しているんだよ。治療費の領収書も取ってあるから。
さようでございましたか。心よりお見舞い申し上げます。
こっちは飲食のコンサルなのに食べられなきゃ仕事にならないんだよ。事実、数百万円規模のコンサル契約も飛んでる。まぁ全額賠償しろとは言わないけど、数十万円でも誠意を見せてくれれば折り合うつもりはあったのに、代替品ですまそうっていうのか。異物混入は重大な問題だろ。飲食業界に顔が利くからフェイスブックやツイッターであることないことを書きまくって拡散して、商売ができないようにしてやることもできるんだぞ。
ご迷惑おかけし、誠に申し訳ありません。大変恐縮ですが、調査結果も踏まえまして、弊社としてどのようなご提案を差し上げられるものかを、再度ご報告させていただく、今しばらくお待ちいただけますようお願い申し上げます。
クレーマーの常套句「誠意を見せろ」「SNSで拡散するぞ」というフレーズが見受けられます。脅しとも取れるこうしたフレーズが出た場合は顧客ではなく、クレーマーとしての対応に切り替える必要があるかもしれません。
渡邊さんはこのあと、顧問弁護士への相談。異物混入は事実であっても、同様の食品を食べるたびに動悸がするという主張との関連性は疑問であるので、この点をよくよく確認する必要があるとの見解をもらったそうです。そこで、渡辺さんは山下さんに、異物混入と山下さんの症状との関係について主治医の見解がわかる書面を出してくれるように頼みましたが、山下さんはあいまいにごまかすばかりでした。では相手がクレーマーだった場合、どのような対応が必要になるでしょうか?
弁護士 藤本慎司 監修|東京弁護士会所属
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