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Case19:こちらの説明より先に、お客様の主張に耳を傾ける2023年7月10日
今回ご紹介するのは、持ち前の愛嬌でどんな相手でも懐に入り込んでしまう飯塚直人(52)が担当した【大手家電メーカーで起きた故障クレーム】模範解答編です。
結論ありきで会話を進めるのは避けるべき
こんにちは、飯塚です。
前回に引き続き、大手家電メーカー・デンショーテクニカで起こった事例について見ていきましょう。今回のケースは、自社製品のオーブンレンジが発火したことに端を発し、問い合わせ窓口の高野智さん(25)とユーザーの竹部早苗さん(34)のやり取りの中で起きたトラブルでした。
クレーム内容
- ◆事実を述べているにも関わらず、発火の原因を一方的に疑われた。
2人の会話を改めて振り返ると、高野さんはしきりに調査結果を強調していました。明確なデータに基づいた報告なのかもしれませんが、「だから、こちらは悪くありませんよ」と言っているようにも取れますよね。自分に非がないと考えている竹部さんからすれば、疑われていると感じても仕方がないでしょう。
今回の事例における適切な対応としては、高野さんは竹部さんの主張を最初に聞くべきでした。調査結果の内容はさておき、まずはお客様側の言い分をしっかり受け止めるのが、クレーム対応の鉄則です。では、高野さんとバトンタッチした上司の木村元基さん(50)が対応した様子を見てみましょう。
・・・・・・(マネージャー木村元基さん(50)と対応を代わる)・・・・・・
お電話代わりました。マネージャーの木村と申します。弊社の製品をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。オーブンレンジが発火したとのことですが、お怪我などはされませんでしたか?
えぇ、大丈夫です。それより、客を疑って嘘つき扱いするってどういうこと? こっちは嘘なんて言ってないし、普通の使い方しかしてないんですけど!
誠に申し訳ございません。ちなみに、普段はどのような用途でお使いになられているのか、伺ってもよろしいでしょうか?
作り置きの料理を温めたり、パンやピザを焼いたり。発火した時もスーパーのお惣菜をパッケージの表示通りに温めていただけだし。毎日何かしら使ってますけど、何か問題でも?
いえ、全く問題ございません。毎日ご使用とのことですが、清掃はどれくらいの頻度でされていますでしょう?
清掃?それはまぁ、汚れが目立ってきた時に適当に。
左様でございますか。実はですね、オーブンレンジは庫内に残った食品カスや油汚れが発火の原因になることもございまして。
え、そうなの? 初めて聞いた。もしかしたら汚れが溜まっていたのかも……。使い方は守ってるつもりだけど、掃除って大事なのね。
おっしゃる通りでございます。ですので弊社では、こまめな清掃を推奨させていただいております。場合によっては大きな事故になってしまう可能性もございますので、お気をつけいただけますと幸いです。
いきなり調査報告から入るのではなく、先にお客様の使用用途を聞くことによって、発火した際の状況を確認することができました。対話の中にこの手順があったからこそ、その後の掃除のくだりに上手く繋げることができたわけです。
正面から正論をぶつけたところで、すんなり納得してもらえるとは限りません。相手に非があることをそれとなく伝える、あるいは自覚的に気づかせるには、テクニックが必要。「聞く力」「話す力」を駆使して、スムーズな理解を促しましょう。
弁護士 藤本慎司 監修|東京弁護士会所属
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