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カスハラ事例によくあるフレーズとその対策2024年10月14日

どのようなビジネスであっても、お客様から苦情やクレームをいただいてしまうことがあります。この連載「苦情・クレーム対応ガイドブック」では、そんなもしもの事態に備えてその対応方法を解説していきます。今回のテーマは、覚えておくと役に立つ「カスハラ事例によくあるフレーズとその対策」です。

カスハラ事例によくある5つの要求パターン

企業や従業員などに対する、理不尽なクレーム・言動を伴う迷惑行為。過去には店員に土下座を強要し、その様子を撮影してSNSにアップする事件が報道されたこともありました。また、トラブルの示談金と称して高額な金銭を企業に請求し、逮捕に至った事例もあります。
 
こうした迷惑客からの理不尽な要求には、不当に金品を得ようとするものや意図が不明瞭なものなど、正当なクレームとは明らかに目的が異なる悪質クレームが潜んでいることも多いです。実際にクレーム対応の現場で対応に困った経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
その場で無理な要求を押し通そうとする悪質な迷惑客。以下では、カスハラ事例によくある5つのフレーズと、それぞれの状況で適切な対応策をご紹介します。
 

「責任者(店長・上司)を出せ!」

責任者を要求する行為は、顧客が問題の早期解決を求めて感情的になっている場合や、自身の要求を強く主張したい場合が多いです。しかしクレーム対応の現場では、責任者が直接対応する決まりはなく、要求に応じる義務はないと考えて問題ありません。
 
とはいえ、アルバイトのスタッフ等、業務経験の少ない方がクレーム内容の正確な対応やヒアリング、また報告を行うことは事実上難しいでしょう。そのため、普段から「トラブル発生時に対応を担当する優先順位(店長・副店長・リーダー等)」を、従業員間で事前に共有しておくことも重要です。
 
現場での対応で、「上司を呼べ/電話につなげ」等の要求があった場合には、「私がお客様より伺ったお話を、責任を持って社内に報告いたします。まずはお話をお聞かせいただけませんか」といった積極的なヒアリングの姿勢を示すことが重要です。
 

「土下座して謝罪しろ!」

謝罪のために土下座を強いる行為は、強要罪の違法行為にあたります。そのため、仮に企業側に落ち度がある場合でも一切応じる必要はありません。謝罪すべき部分は丁寧に謝罪したうえで、「土下座はいたしかねます。そのような強要はどうかお控えください」と、はっきり伝えましょう。
 
それでも要求が収まらなければ、「これ以上のことはできかねます。警察に通報せざるを得なくなってしまいますので、土下座の強要はおやめください」と警告。再三の警告の後も強要が続く場合、最終的には警察への通報も必要です。いざという時のために、そのような認識を従業員に周知しておくことが重要です。
 

「誠意を見せろ!」

“誠意”という言葉は非常に曖昧です。トラブルの内容や立場の違いによって、明確な基準や尺度はありません。そのため「誠意を見せろ」というフレーズは、具体的な要求ではない形で、金品その他の具体的な対応を暗に求める意図が含まれます。
 
まず「どのような対応が必要とお考えなのか、お教えいただけますでしょうか」といった質問で、先方の言う「誠意」が具体的に何を指すのか、またその理由を伺いましょう。「自分で考えろ」といった反応があれば、「こうしてお詫びを申し上げることが、私どもの誠意と考えております」といったフレーズが有効です。
 
そのうえで先方の具体的な要求を伺えた際には、その場でお断りすべき要求なのか判断に迷うなら、「後日お電話にて企業としての回答をご報告いたします」として一旦お預かりし、お詫び以上の対応が明らかに不要な場合には、「誠に申し訳ございません。お詫びを申し上げる以外のご提案を申し上げることができかねます。ご理解を賜りますようお願いいたします。」といった文言にてお断りします。
 

「ミスをした従業員を処罰しろ!」

従業員の処分に関する権限は企業にありますが、顧客の要求を鵜呑みにして処分することは許されません。まずは「しっかりと調査を行い、会社として判断いたします」と伝え、クレームの内容を詳しく伺いましょう。ただし、「結果としての処分の有無や内容については従業員の個人情報であり、一切開示することはできない」点については、十分な説明が必要です。
 
実際の処分は、当然顧客の要求の有無とは無関係に、当該従業員を始めとする関係者へのヒアリングを始めとする慎重な調査を踏まえ、適切に判断されるべきものです。
 

「金(サービス)を払え!」

金品の要求には、例えば「従業員にコーヒーをこぼされたからクリーニング代を請求する」といった正当な要求と、「待ち時間が長く精神的苦痛を感じたため慰謝料を請求する」といった不当な要求があります。まずは十分なヒアリングによって状況を確認し、正当な要求かどうかを見極める必要があります。
 
その場の勢いに流されて要求通りの金品を渡すような対応はせず、入念な事実調査のもとに企業としての適切な対応を検討することが必要です。
 

要求を鵜呑みにせず、事実調査をもとに適切な対応を

悪質クレームの対応に時間を取られるのは、ほかのお客様にも多大なご迷惑をおかけしてしまいます。過剰な要求を安易に受け入れることで現場の従業員が不快な思いをしたり、心を病んで退職したりといった事態につながる可能性もあるでしょう。企業は、現場の従業員がそのような不当な目に遭う危険性を第一に避けなければなりません。
 
今回ご紹介した5つの対策に共通するのは、「その場ですぐに要求を受け入れないこと」です。たとえ企業側のミスが明確でも、まずはクレーム内容を丁寧にヒアリングし、企業が主体となって調査を実施。そのうえで企業として誠心誠意の謝罪と、適切な対応を行う姿勢を徹底することが重要です。
 
そのためには、現場レベルで悪質クレームかどうかを判断できる教育や体制も不可欠です。企業としての対応方針を明確にし、社内全体で共有して適切な対応を実現しましょう。

 

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