ホーム › 連載・コラム › Case2:正当に取得した個人情報なら法的には削除依頼に応じる必要はない
Case2:正当に取得した個人情報なら法的には削除依頼に応じる必要はない2020年8月17日
今回ご紹介するのは、いつも冷静沈着な室内随一の頭脳派である青山健一(47)が担当した【アパレルにおける個人情報削除依頼クレーム】模範対応編です。
迷ったときは専門機関に相談して法的見解を確認
こんにちは、青山です。
前回に引き続き、アパレルブランド・クロネのカスタマーサポートで働く竹内壮太さん(28)が受けた個人情報の削除依頼について考えていきましょう。顧客対応の記録として、できれば消したくないのが企業側の本音。法的に問題はないのでしょうか?
クレーム内容
- ◆不愉快な対応をされた
- ◆提供した個人情報を抹消してほしい
個人情報の取り扱いについては、専門機関である個人情報保護委員会の相談窓口に連絡し、法律的に企業側の見解が間違っていないかの確認しておくと安心です。法律上、問題がないことが明らかであれば、お客様に対する説明の説得材料になります。
ちなみに個人情報保護法では、事業者が個人情報の削除に応じる義務があるのは、事業者が個人情報を不正に取得した場合や目的外利用をした場合に限られるとされています。つまり今回のケースにはあてはまりません。
社内関係各署での協議の結果、弊社にてご案内を差し上げた経緯のあるお客様について個人情報を削除してしまうと、どなたにどのようなご案内を差し上げたものかが不明になってしまい、今後の業務に支障がでることが考えられるので、申し訳ありませんが個人情報削除のご要望にはお応えできかねます。何卒ご理解ください。
どういうことよ。個人情報は私のものでしょ。本人が消せって言ってるんだから削除しなさいよ。
恐れ入ります……。今回のように修理受付に伴い正当に取得した個人情報については、ご本人様からのご要望であったとしても削除依頼に応じる必要はないと個人情報保護法でも確認させていただきました。弊社としましては、お客様の情報を不正に取得した経緯はないため、企業経営上、さらに社会的公益性の観点のいずれからも、お客様の個人情報削除のご要望に沿うことは難しいという結論にいたった次第です。ご要望に添えない結果となりまして、大変恐縮ですが、ご理解いただけますようお願いいたします。
もうわかったわよ。その代わり、けっして漏洩させたり、不正利用したりしないようにしてちょうだいね。
ご理解いただき、ありがとうございます。
このケースは該当の個人情報が、正当に取得されたものかどうかが鍵となります。当初島田さんは有償修理を申し込みしていることから、修理を目的とした個人情報の提供の趣旨に同意なさった上で、情報を提供したと言えます。
個人情報保護法上は、正当に取得された個人情報であれば、ご本人からの要望であったとしても削除依頼に応じる必要ありません。企業の見解として、削除できない理由を丁寧に説明し、法的根拠も示すことで、必ずやご了承いただけるでしょう。根気強く、毅然とお断りする姿勢を崩さないことがポイントです。
弁護士 藤本慎司 監修|東京弁護士会所属
〒105-0003
東京都港区西新橋1-21-8 弁護士ビル410号
03-5251-3786
選任担当者がおらず十分な対応ができていない
難易度の高いクレームが増えてきて困っている
スタッフによるスキル差が目立ちはじめた
……など
苦情・クレーム対応のことならお気軽にご相談ください。
※「クレームナビ」を見たとお伝えいただくとスムーズです。