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File2-2:企業のトップが明確かつ毅然とした対応方針を示すこと2025年6月2日

どんなお仕事でも、想定外の苦情・クレームがあるものです。その中でも働くみなさんの現場で頭を悩ませるのは、顧客による嫌がらせ行為。この連載では、みなさんから当相談室に寄せられた様々な「カスハラエピソード」を紹介し、顧客からの不当な要求に対する「毅然と」かつ「丁寧な」適切な対応を身に付けていくための対処方法をお伝えしていきます。
 
今回ご紹介するカスハラ事例は、【「写真が気に入らない!」ワガママ放題の新婚カップル】情報整理編です。

カスタマ―ハラスメントかどうかの判断は慎重に

大杉毅(50)

こんにちは、カスタマーサービスのお悩み相談室の大杉毅(50)です。今回のケースについて改めて状況を整理してみましょう。
 
今回の写真館でのトラブルでは、発生初期の段階で、責任感の強い現場スタッフが一人で解決しようと奮闘したことが問題を複雑化させる一因となりました。お客様の不満を増幅させた背景には、現場での判断が感情的な応対につながり、適切なエスカレーションや事実確認が不十分だったことが挙げられます。
 
こうした状況を防ぐためには、冷静に情報を整理し、適切なタイミングで上司や専門部署へ相談する体制を整えることが重要です。
 

X氏夫妻(26・23)の言動・行動

  • 打ち合わせの内容を覆して何度も再撮影を要求した。
  • クレーム解決の糸口が掴めず、撮影代の返金と写真データをお渡ししたにも関わらず、それだけの対応では納得いかない!と再々撮影の要求、慰謝料としての交通費などを請求し、スタジオやスタッフへの誹謗中傷を繰り返した。
  • 「馬鹿野郎!無能だ!」など発言し、「暴言をやめてほしい」と伝えても、やめなかった。
  • 「スタッフ全員無能」など見下した発言や威圧的な態度を繰り返し、店舗のスタッフは恐怖を感じ萎縮していた。
  • 体調が悪くなったのはあのカメラマンのせいだ!などと、個人への誹謗中傷、個人攻撃を繰り返した。

またX氏夫妻には、通常想定されるレベルを超えるような明らかに過剰な要求を繰り返す、「自分の考えこそが正しい、それに合わせられない方が悪い」と思いこむといった傾向が見られました。

執着思考タイプ
感情のコントロールが効かず、長時間の従属的なコミュニケーションを強いるタイプ
 
このタイプに分類されるクレーマー
・恋愛ストーカー型
・怨恨による攻撃型
・精神的な問題型

誤解思考タイプ
自分の思い込みや勘違いに基づいて不当な要求をしてくるタイプ
 
このタイプに分類されるクレーマー
・思い込み型
・勘違い型

 
このことからこの写真館では会社全体での接客方針を改め、お客様から過剰な要望や社会通念から逸脱した要求があった場合には、速やかに会社へ報告・相談すること。毅然としてお断わりすることを徹底するよう全従業員に通達しました。
 
また、何かこのようなトラブルが起きたとしても、一人で抱え込まずに、組織的な対応を行うための緊急時の連絡体制の整備を行い、ルールを明確にするよう専門の窓口を設置しました。
 

カスハラと考えられる迷惑行為や言動から適切な対応を判断!

迷惑行為の種類

「リピート型」
 
一定の企業回答を伝えているにも関わらず、長期にわたって理不尽な要求をひたすら繰り返すカスハラのこと  
「暴言型」
 
侮辱的な発言や差別・人格否定・名誉毀損につながる発言を大声で怒鳴りちらすカスハラのこと  

具体的な言動

リピートに該当する言動

  • ・対応をお断りしても、理不尽な要求が続き、おやめになっていただけない
  • ・度重なる店舗への電話とスタジオや店舗スタッフへの誹謗中傷
  • ・個人の発言に対する揚げ足取り

 
暴言に該当する言動

  • ・「へたくそ」「無能」などといった見下す侮辱発言をした

 

判断基準(目安)

  • ・最終回答を返答済みで平行線となる対応や、本論から外れて揚げ足取りが30分以上にわたって継続した場合
  • ・同じお申し出内容で回答済みにもかかわらず、電話等を繰り返してくる場合(3回目以降)
  • ・対応者にとって傷つけられるような発言、限度を超えるような表現、侮辱的な発言など
  • ・受け手にとって威圧・プレッシャーを感じる表現

 

対応トーク例

  • 「お客様にはお忙しいところお時間もいただいておりますが、お時間が長時間となっております。お申し出に対する回答は繰り返し説明させていただきました。これ以上の対応はできませんので、本件につきましては、対応を終了させていただきます。申し訳ございませんが、ご理解いただけますようお願い致します。」

上記の対応が繰り替えされた場合

  • 「すでにご説明させていただきました通り、これ以上のご要望には応じられませんので、電話を切らせていただきます。」

……など

 
 
【執着思考タイプ・誤解思考タイプ】のクレームの要因には、実際の損失や被害があるわけではなく、「自分が不快だった」「もっと配慮がほしかった」といった感情的な不満があります。今回の事例は主観的な感情に基づく不満を抱え、過剰な要求をエスカレートさせたケースと言えるでしょう。さらにこのタイプは、相手に責任を押し付け、冷静な対話が難しいのが特徴です。
 
次ページでは、【執着思考タイプ×誤解思考タイプ×リピート型×暴言型】の効果的な対処方法についてご紹介します。
 

※この記事はカスタマーサービスの対応例を学ぶために事実を基に構成したフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

 

弁護士 藤本慎司 監修|東京弁護士会所属

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