
どんなお仕事でも、想定外の苦情・クレームがあるものです。その中でも働くみなさんの現場で頭を悩ませるのは、顧客による嫌がらせ行為。この連載では、みなさんから当相談室に寄せられた様々な「カスハラエピソード」を紹介し、顧客からの不当な要求に対する「毅然と」かつ「丁寧な」適切な対応を身に付けていくための対処方法をお伝えしていきます。
今回ご紹介するカスハラ事例は、【「写真が気に入らない!」ワガママ放題の新婚カップル】トラブル発生編です。
X氏夫妻(26・23)

入籍して間もない新婚カップル。夫婦揃って記念日やイベント事好き。
投稿者(32)
これは、私の職場で起こった実際の話です。
都内の写真スタジオで働いている私。先日、とあるご夫婦がメモリアルフォトの撮影で来店されました。お客様へは、より良いサービスをご提供すべく、利用約款にもきちんと目を通していただき、ご理解を得た上で、作風イメージや参考写真などを使い丁寧なご説明をしました。ご予約の際には「すべてお任せで!」とおっしゃっていたのですが、いざ撮影を始めると店舗で用意していた衣装からポーズに始まり、文句ばかり。それでもできる限りのご要望を叶え、ご納得いただいたはずだったのですが・・・。
後日、「思っていた仕上がりと違う!」と、ものすごい剣幕でスタジオに電話がかかってきました。担当したフォトグラファーを呼び捨てにし、「◯◯は下手くそ」「写真が安っぽい」と大激怒。「もう一度イチから撮り直せ!」とのことなので、ご要望にお応えできなかったことを深く謝罪し、あまりの剣幕に再度撮影させていただく運びとなりました。
2度目の撮影にあたっては、事前に入念な打ち合わせをして挑みました。ポーズを変えるたびにご夫婦に確認いただき、その都度OKをもらった上でようやく撮影が終了。今度こそはご期待に応えられたと思っていたのですが…。
なんとその数日後。「思っていたイメージと全く違う!!このクオリティの写真ではどうしても納得できない!」と、今度はスタジオに怒鳴り込んできたのです。そして「自分たちがこんなに時間と労力を割いているのに、なぜ要望を叶えてくれないんだ!」と・・・。
店舗スタッフと一丸となりできる限りの事前準備を行い再撮影に挑んでいました。都度画面も確認していただきながら撮影を進めていたにも関わらず、今になってご納得いただけない具体的な理由は何なのか教えていただけないものか?とご質問すると、お客様は呆れたご様子でこう回答されたのです。「これまでは他社スタジオを利用していたが閉店したため「仕方なく」当スタジオを利用したが失望した」と。X様が言うには、画像越しで見たときの不満はさほどなかったが、実際の写真を見たらパートナーの表情も硬く湧き上がるような感動がないとのこと。
そこで他社スタジオで撮影された写真を見せていたきましたが、正直センス(作風)が違うと感じざるを得ないものでした。私たちはプロとして誰が見ても良い写真を撮ってやろうと思う気持ちもありましたが、到底X様からのご要望にお応えできるとは思えず、また他のお客様との公平性とにおいても再々撮影に応じるのは不適切と判断し、撮影代の返金と写真データのお渡しでご容赦いただくよう申し出ました。
しかし、それだけでは不満のようで、「わざわざ足を運んで来店したんだ、交通費も返せ!」「すべてのスタッフが無能!それでもプロか?」「言った通りに撮影し直せ!」と怒鳴り散らす始末。ひたすら平謝りしてその日は退店いただきましたが、その後も頻繁に電話を掛けてきては、当スタジオやスタッフへの誹謗中傷を繰り返しました。
また、X様からの怒りの矛先はカメラマンから次第に店舗責任者の店長へ向かっていきました。これまでの店長はお客様に喜んでいただくためには、わがままなリクエストにも応えてきましたが、X様から繰り返される長時間の電話での店長への揚げ足取り、誹謗中傷と思える個人攻撃のような言葉の数々で店長の疲労も限界に達し、退職まで考えるようになっていました。
X様への過剰な要求に対しては、繰り返し丁寧にお断りするものの、次第に「あのカメラマンを辞めさせる権限のあるものから電話をかけてこい!」など理不尽な要求が続き「あのカメラマンのせいで体調が悪くなり迷惑を被っている!」などと騒ぐようになっていきました。やむなく本部へ相談し、指示を仰ぐことになりました。
あまりにもしつこくスタッフも疲弊してしまったため、「この場では判断できません。大切なことですから、しっかり協議して改めてご連絡いたします」と、やむなく店舗ではなく本部での対応に切り替えることにしたのです。
後日、一連の流れを把握した本部がお客様へ連絡。「ご指摘いただいた内容については、社としても真摯に受け止め、改善に努めるよう努力する」と前置きした上で、今回はお客様のご要望にお応えさせていだたくことが難しいため、代金の返金と写真データを無料で提供する旨を改めてご説明しました。それでもお客様からの強い不満の言葉が続きました。
しかしながら、その後もX様からのクレームが続く状況で、店舗業務に支障がでるような行為は放置できません。「今後もこうした要求を繰り返されるようであれば、会社判断として法的な対応を視野に入れることも協議させていただきます。」と通告すると、以降、このお客様からの連絡が来ることはありませんでした。
「言った通りに撮影しろ!」と何度も再撮影を迫る新婚カップル。最終的にスタジオ単体ではなく、会社としての意向をはっきり通告することでトラブルは収束したようです。次回は、この事例について当相談室の大杉毅(50)が詳しく解説します。
※この記事はカスタマーサービスの対応例を学ぶために事実を基に構成したフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
弁護士 藤本慎司 監修|東京弁護士会所属
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